Lecture 02第2回 – 2024年7月25日
- Lecturer
- NosajThing / NONOTAK
- Reporter
- 中田 拓馬
8月25日。晴れ渡る空の下、暑さに包まれた線路沿いを歩きながら、かねてからの憧れであるアーティストのレクチャーを聞きに渋谷駅からCircus Tokyoへ向かいました。NONOTAKとNosaj Thing x 真鍋大度によるレクチャーは、直前の告知にもかかわらず満員となり、Flying Tokyo 2024に選ばれた5名として最前列でその貴重な時間を共有することができました。このレポートでは、当日の記録と私自身の学びをお届けします。
NONOTAKによるレクチャー
2011年に活動を開始したNONOTAKは、建築を学んだTakamiさんとイラストレーターのNoemiさんによって構成されたアーティストスタジオです。彼らの最初のコラボレーションは、建築物のエントランスに光を使ったペインティング作品を制作することから始まりました。このプロジェクトがきっかけで、音楽と映像、空間と光を融合させたインスタレーションへと進化していきます。
https://www.nonotak.com/_ISOTOPES-V-2より
初期の大きなプロジェクト「ISOTOPES」は、パリでのコンペを目指して、ひと夏をかけて制作されたそうです。ミニチュア模型を使った作品の構想を練り、コンペには敗れたものの、そのリールをさまざまな場所に送った結果、スイスのジュネーブで2013年2月に開催されたMapping Festivalでの展示に恵まれます。人の影がスクリーンにできるのを避けるというアイデアから設計されたこの作品を、模型があたかも実在するかのようにプレゼンテーションすることで、展示のチャンスをつかんだそうです。
「DAYDREAM」は、同様に模型を使用し、作品部分だけを表面に表示し、それ以外を徹底的に裏に隠すことで、存在感を高めるというアプローチを取りました。そして大きなスケールでやった際に人の影ができるのも面白いと考え、2013年の夏にはパフォーマンス作品として発表されました。「SHIRO」や「Unbalance」と題されたそれらの作品は、元バンドマンでもあるTakamiさんの、ステージに立ちたいという欲求とも絡み合って、美術館からステージへと活動の場を広げる契機となりました。この過程でライゾマティクスとの出会いも生まれたそうです。
https://www.nonotak.com/_SHIROより
また、特別なフレームやプロジェクションを必要とせず、より多くの人に届けられるようにLEDスクリーンのみを使用した作品にも挑戦しました。LEDスクリーンが安価になり、ライブやフェスなどで徐々に普及していくなかで、メインステージに立てるという戦略的な動機もあって作品が作られたそうです。他にも、光にどう魂を与えるかというテーマで作られた彫刻作品や、面ではなく空間をスクリーンにするためにフォグのインスタレーションに着手するなど、多様なアプローチに挑戦しているのが特徴的です。
ドームプロジェクトや中国の巨大穴に設置された「Moon」などの話は印象的でした。自らが仕組みを設計した作品ではフレームの制約がありますが、ドーム映像や床面に丸いスクリーンが埋め込まれている空間などは、フレームが規定されていないため、自由なものが投影できる反面、中心がないので逆に迷ってしまうそうです。そんな中でも、NONOTAKに課せられた白という制約から逃げないよう、作家性を「身分」という言葉で表して向き合っているのが印象的でした。「Moon」は月のようなイメージを表現するために、LEDスクリーンの上を歩ける場所を作り、井戸のような建築物の中に水っぽいビジュアルを配置した作品です。地面にビジュアルを置くことで平衡感覚が崩れるといった体験ができます。
https://www.nonotak.com/_VOLUMEより
工事現場で作った作品「VOLUME」では、建設現場のコンストラクションだけを使って光を制御し、影で遊ぶ仕組みを作りました。大量の人たちが通る場所で壊れない作品を作ることもアイデアの一つでした。これは、過去に例がないほどたくさんの人々が体験してくれた作品になったそうです。
インドネシアでは、床面にビジュアルを配置することで空間の荘厳さを阻害せずに光を使った作品「LEAP」を制作しました。環境によって様々な制約があることは当然で、その中でもNONOTAKのスタイルを崩さずに作品を作れるということを示した作品のように感じました。「OCEAN」は、建築とアートの融合を目指し、長期間残る作品を作るという目標で制作されました。パリの新しい駅には作品設置のプログラムがあり、その選ばれた機会にパーマネントインスタレーションとして採用されたことは、長い年月がかかった感慨深い体験だったとTakamiさんが述べています。ルーツと作家性の結びつきを感じさせる一作です。
https://www.nonotak.com/_PLUME-V-1より
「PLUME」では、机の上でペンが落ちたときに鏡に線ができる現象を発見し、鏡2枚とライト1本を使ってキネティックな作品を作成しました。鏡を動かすのではなく光を動かすことで動きを生み出し、ナルシス的な恐怖感を表現しています。ARTECHOUSEで「COMA」を発表したときネット上で「こいつらムービングヘッド使ってるけど、全然光を使わないやん」とつっこまれたそうですが、ムービングヘッドの要素の一部だけを抜き取ってダンサーに見立てて踊らせている様は、規律に従って黙々と動き続けるダンサーのような美しさを持つ作品です。
ファイバーオプティクスを使った作品「ZERO POINT」では、1mmの本当に細い光を作るのは難しいため、物理的にその問題を解決したそうです。さらには、黄色のファイバーに青色のレーザーを投射することで、完全な白色を再現したそうです。
最後に見せてくれた「SATELLITES」はキネティックな作品の中でも最も大きな作品です。回転するLEDを天井から吊るし、カスタムのLEDバーを使用して制作しました。この作品はあまりにデカかったため、すべてが組み合わさった状態で見ることは現地でしか叶わなかったそうです。それでも事前に小型のシミュレーションは行い、最後は現地でも自由に形を変えられるよう、ひとつひとつのアイデアに愛情を持ちすぎず、現場で調整できることの重要性を強調されていたのが印象的でした。
学び
NONOTAKのレクチャーでは、その作品数の膨大さに圧倒されました。筆者は、2013年にNONOTAKがMapping Festivalでデビューした頃、オランダでアーティスト活動というものを知り、さまざまなフェスティバルに出入りしていました。その時からここまでで、これほどの差が出るのかとショックを受けると同時に、ひたすら作り続けることの重要性を強く感じました。特に印象的だったのは、作品そのものの仕組みが、作品の半分を占めるという視点です。NONOTAKは仕組みを深く考え、その仕組みをどれだけ活用して遊ぶことができるかに焦点を当てて作品を作り上げています。作品が単なるインスタレーションやパフォーマンスのフォーマットにとどまらず、仕組みそのものが作家性の核心となっているという考え方には、非常に感銘を受けました。
さらに、作品制作においてフォームを固めすぎず、現場の空気感や形に応じて柔軟に調整するというアプローチも新鮮でした。この方法が、彼らの作品が生き生きとした表現を生み出す要因であることがよく理解できました。これらの教訓を、自分の作品作りに生かしていきたいと感じました。
Nosaj Thing x Daito Manabeレクチャー
Nosaj Thingと真鍋大度のレクチャーでは、彼らのコラボレーションと制作プロセスに関するエピソードが紹介されました。2007年から2008年にかけて、Twitterで知り合ったNosaj Thingと真鍋大度は、初期のライブセットや音楽作品で意気投合しました。当時、Twitterはまだ新しいプラットフォームで、Nosajがアルバムを初めてリリースしたばかりの時期でしたが、Daitoは音楽シーンに精通しており、Los Angelesのクラブシーンをリサーチしていたため、共通の興味で繋がりました。
Nosaj Thingはアルバム制作におけるコンセプトの重要性を強調しています。彼はメモアプリでアートディレクションボードを作成し、チームと共有することでプロジェクトの方向性を明確にします。気になるワードやアイデア、自身の撮影した写真や画像をリストアップし、そこからアルバムタイトルを決定する方法を取り入れています。音楽制作中に迷子にならないようにするため、何度も見返しながら進めることが大切だと述べています。筆者もFlying Tokyo2024を通じて音楽制作を始め、映像のように絵コンテやスケッチなどでアイデアを記録できないことを知り、Nosajの手法の重要性を学びました。
最新のアルバムはCOVID期間中に90%がリモートで録音され、コミュニケーションを取りながら進める努力がされました。制作では、コードからメロディーのパートを構築し、「Blue Hour」ではJulianaとセッションを重ね、ボーカルを探りながらチョップしていきました。音色を集めて構成し、時には他の曲の音を使い回しながらレイアウトを調整していくことで、曲の方向性を見出す瞬間があるといいます。考えすぎる前に、アイデアを出しながら探ることの重要性が印象的でした。
真鍋大度は、Nosajと共に制作する際、自身が提供したドラムパートが一瞬でNosajの曲になる様子に感心していました。Daitoの高い音楽家としての実力と、リリースされていないことに対するNosajのフラストレーションも紹介されました。二人のコラボレーションでは、役割を柔軟に入れ替えることで、音楽とビジュアルの統一を図り、共同制作の重要性を説いていました。
アルバムアートワークやビジュアルデザインにも関わり、インディペンデントアーティストとしての制作方法やチームとの連携の重要性についても語られました。Nosajはディレクターとは言わないものの、アイデアをさまざまな知り合いと共有することを大切にしています。最新のアルバムでは、元NIKEデザインディレクターのEric Huがアルバムの文字をデザインし、スクラッチも有名な知人にお願いするなど、さまざまな協力を得ています。Ericのデザインも、Nosajのメモから方向性を掴んでくれたとのことです。
「Nosaj Thing & Pink Siifu - Look Both Ways」は3000ドルで制作されたミュージックビデオですが、16mmフィルムで撮影されており、その質感が最高だと紹介されました。
最後に、ライブセットの制作においては、長年にわたりアップデートを続けているAbletonの画面が映され、自分の曲のパーツをバラバラにしたり、パーツに分けたりしながら最適な音の組み合わせを探る様子が紹介されました。今後のライブパフォーマンスに挑む筆者としては、泥臭い方法しかないということを学びました。
学び
Flying Tokyo 2024を通じて、オーディオビジュアルの音の部分に挑戦することを主な目標としている自分にとって、スケッチを記録する様子やライブセットの組み方などを知ることができ、とても有意義な時間となりました。一方で、楽曲制作における意識していることやリバーブ、最終マスター前後の音の違いについての深掘り、また、Circusというクラブでのレクチャーという機会を活かして、実際にクラブに合う音の出方を探る様子も見てみたかったというのが正直なところです。
Nosajの作品制作におけるスタンスは、フリーランスのデザイナーや映像作家の知人の生き様と似ていると感じました。ゆったりとしつつも、ストイックにものづくりや日常への好奇心を持つ姿勢には共感しました。今後、楽曲制作を進める中で、Nosajに曲を批評してもらえる機会があると素敵だと感じるとともに、Daitoさん自身のDJ論や楽曲制作論についてもぜひ聞いてみたいと思いました。
レポート: Q&Aセッションの印象
レクチャーの最後に行われたQ&Aセッションは非常に刺激的で、特にいくつかの回答が心に残りました。それぞれのアーティストがどのように自分の作品を磨き上げ、キャリアを築いているかについて深い洞察が得られました。
NONOTAKのアプローチ
NONOTAKに「いつ食っていけると思った?」という質問が投げかけられた際、彼らの回答は創作の重要性と彼らのストイックな姿勢を如実に表していました。NONOTAKは「とりあえず人にも会わず、夜も寝ずに作り続けていた」と語り、彼らの作品作りに対する真摯な態度が伝わってきました。彼らのスタンスは、アーカイブをし、その成果が次の機会を呼ぶというもので、作家性の方向性が一貫しているからこそ、多くの話が舞い込むと述べています。休むことなく、ひたすら作品を生み出し続けることで、自らの道を切り開いているのです。
Nosajの音楽的アプローチ
Nosajの回答もまた興味深いものでした。彼は「オウテカやAphex Twinでさえ、4~8くらいのパートのトラックだからね」と語り、クオリティを高めるためには音を引き出ししていきながら、シンプルさを追求していると述べました。自分の好きな音楽を参考にしつつ、そこにどう近づくかを考え抜くことで、音楽のクオリティを向上させているのです。
NONOTAKの自由とシンプルさ
同じくクオリティに関する質問に対して、NONOTAKは「どれだけ自由があっても、どれだけシンプルに、どれだけ自分たちの作風にできるか」を常に考えていると答えました。彼らは、必要なものだけを残すようにし、シンプルでありながら強いメッセージを持つ作品作りを心がけています。
Nosajのビジュアルと音の関係
Nosajがビジュアルと音の関係について話した際には、彼の独自のアプローチが印象的でした。彼は「常にShazamを使って、自分の好きな瞬間を記録し続けている」と述べ、音楽やビジュアルのアイデアをコラージュのように集め、トレーニングとして続けていると語りました。このプロセスが彼の能力を形成し、ライフスタイルの一部になっているのです。
音の適応について
「低音の扱い」についての質問に対して、NONOTAKはインスタレーションにおける音の使い方について詳しく説明しました。音を鳴らせない空間や、音の通りが悪い空間では、その場に最適な音を考慮する必要があると述べました。ビジュアルと音の融合を重視し、音楽と空間の調和を追求しています。
Nosajも同様に、DJとしての経験から音の体感について深く理解しており、「場所と音の体験が大きく異なるため、波長よりも比較して感じることが重要」と語りました。彼は、一度完璧な音のポケットを見つけたら、それを使い回すといいます。一方で10年のDJキャリアがある彼でも、場所と音がどう体験に繋がるかというのは常に仲間と話し合っているトピックだそうです。最近はプラグインでさまざまな空間をシミュレーションすることができるので、そこでシミュレーションしてみることもあります。
感想
今回の会では、アーティストたちの姿勢や重要視していることについて多くの学びがあり、大変有意義な時間を過ごすことができました。特にNONOTAKについては、メディアアートの表現を追求する際に、必ずしも最初から技術的な素養が必要ではないという点が新鮮でした。アイデアベースで仕組みを考え、それらを実装する方法は、Youtubeなどのメディアを駆使しながら探るというアプローチは非常に刺激的でした。私自身もプログラミングや数学的な思考が得意ではありませんが、インタラクティブな作品やビジュアルドリブンなオーディオビジュアル作品を実現したいという欲求から作品を構想することが多いので、大いに励まされました。
また、Q&Aの中で、真鍋大度さんが「NONOTAKの作品は音が良い」と述べられていた点も印象的でした。「インスタレーション作品を作る際には、音を自身でディレクションできるスキルが最低限必要である」という観点から今回のFlyingTokyo2024期間中は音を用いた作品をつくると決めている筆者としては、その点においてNONOTAKが既に実践していることも心に残りました。
さらに、Nosajの柔軟性についての話や、ヒップホップをバックグラウンドに持つことがルーツと切り離せない感覚に関連しているという点も興味深く感じました。また、音楽性を追求するためには自身に合ったリバーブを探ることが重要であるという真鍋大度さんのアドバイスも、現状では抽象的ながらも非常に大切な言葉だと感じました。全体として、たくさんの貴重な言葉を聞くことができ、有意義な会でした。